職員は, 上記テントが設置された区画が園路整備工事や樹木の移植の対象区域に含まれてい たこともあり,平成17年1月にも同人に対し退去を勧告したところ,同人はテン トの移動を認めるよう要求したが,同公園事務所職員は,同人に対し,テントの移 動を認めることはできない,身の振り方については一時避難所への入所もあるし, 自立支援センターや生活保護等についても関係機関を通じて相談にのる旨伝えた。
公園事務所職員は,同年1月27日,原告Gに対し,同年2月15日までにテント 等を撤去するよう求め,上記テントの所在地にフェンス設置工事を行うこと及び同 フェンスには同テントに出入りするための通路部分は確保するが,それは急には退 去できないための臨時的措置にすぎないことなどを伝えたところ,同人は,同年2 月15日にはいったん一時避難所への入所手続を行ったものの,翌16日には前言 を翻して仮設一時避難所へは入所しない旨申し述べたため,公園事務所職員は,同 月24日,同人に事前に説明の上,上記テントをその周囲と通路部分を除きフェン スで囲むなどした。
原告Gは,その後も上記テントの移動を認めるよう要求するな どして,公園事務所職員の説得には応じないでいたところ,同年6月10日には嘔 吐して気分が悪いなどとして公園事務所を通じて救急車を呼び緊急入院保護業務セ ンターに救急搬送され,そのまま同病院に入院した。
公園事務所職員が同月16日 に同人と面談したところ,同人は同公園事務所職員に対し,病院からは居宅保護の - 44 - 話もされたが退院後一時避難所を経由して居宅保護を受けることができるかどうか 尋ねたため,同公園事務所職員において,居宅保護希望であれば,病院で相談して 保護手続を進める方が早い,病院からであろうと一時避難所からであろうと,どち らが有利ということはない,居宅保護希望なら,病院にも話をして治療を続けては どうかなどと回答した。
原告Gは,入院中であった同年7月16日にはa公園仮設 一時避難所長と面談し,家を持って生活保護を受けたいとの希望を伝えるとともに 就労意欲を見せ,自主退院後の同年9月にも,公園事務所職員に対し,アパートを 見つけてくれたら働く,家を探してくれたら出る,などと述べていた。
公園事務所 職員は,その後も本件代執行に至るまで多数回にわたり原告Gに対して上記テント を撤去するよう説得し,同人は平成18年1月29日にはいったん一時避難所への 入所を希望するなどしたものの,結局入所はしなかった。
なお,前記の整備予定の 園路については,本件各処分時には,原告Gのテントが設置された区画を除いて既 に完成しており,上記テントに係る区画の工事を残すのみとなっていた。
(甲53, 乙9,16,19,証人B,弁論の全趣旨) (ウ) 原告Sは,昭和27年8月26日生まれの男性であり,平成4年ころから a公園にブルーシート製テントを設置して起居するようになり,本件代執行当時に は,キャンプ用テントの骨組みにブルーシートを掛けたりブルーシートをひもで立 木に縛るなどして複数のテント等を設置していた。
同テント設置に係る区画は,同 公園の平成17年度の整備工事において,遊歩道が整備される予定であったことも あり,公園事務所職員は,同人に対し,上記テントを撤去するよう継続して要求し ていたものの,同人は,一時避難所に入るつもりはない,自立支援センターも入っ てすぐ出なければならず,仕事がないなら一緒であるなどと申し立ててこれを拒絶 し,前記「工事のお知らせ」と題する書面の交付後も,同人は,同事務所職員に対 し,一時避難所に入っても福祉の世話になるだけで自立した例がないではないか, 一時避難所は入所しても時期が来ると出て行かなければならず荷物も多いので入所 する気はない,一時避難所や福祉の話はいらない,期限まで放っておいてほしい, - 45 - 自立するには金が必要なので金を借りられるようにしてほしいなどと申し述べ,結 局上記テントを撤去しなかった。
(甲51,乙16,証人B) (エ) 原告Cは,昭和25年8月11日生まれの男性であり,平成12年ころか らa公園内の斜面部にブルーシート製テントを設置して起居の場所とするようにな った。
同人は,昼間は空き缶収集をしているため不在であることが多く,公園事務 所職員は,平成16年6月9日に同人に対し上記テントの撤去等工事への協力要請 をしたものの,個別対応は拒絶され,その後も公園事務所職員が声をかけても,動 く気はない,工事だろうがなんだろうとここにいる,工事をすればいいが,テント は撤去しないし,福祉の世話になるつもりもない,などととりつく島もないといっ た対応であったが,平成18年1月13日に同公園事務所職員と面談した際には, 同人から一時避難所についての質問があり,同職員においてその概要を説明したも のの,結局上記テントが撤去されることはなかった。
(甲51,乙16,19) (5) 被告における自立支援策について(甲74,乙4,5,10,証人T,弁論 の全趣旨) ア被告においては,大阪市における野宿生活者の増加等の状況を踏まえ,平成 10年5月に大阪市野宿生活者問題検討連絡会が設置され,国の取組みが必要な問 題であるとして国に対して要望をするとともに,同年から平成11年にかけて大阪 市における野宿生活者らの実態調査を行い,総合的な施策を検討するなどし,平成 11年7月には,大阪市長を本部長とする大阪市野宿生活者対策推進本部が設置さ れ,平成12年3月には有識者も交えた大阪市野宿生活者対策に関する懇談会も設 置された。
そして,被告は,同年4月には西成区の臨時夜間緊急避難所を開設する とともに,後記のとおり自立支援センターを順次開設する一方,d公園,e公園及 びa公園に,それぞれ仮設一時避難所を順次開設した。
また,平成14年8月7日にはホームレスの自立の支援に関する特別措置法(自 立支援法)が制定され,厚生労働大臣及び国土交通大臣は,平成15年7月31日, 同法8条1項の規定に基づき,「ホームレスの自立の支援に関する基本方針」(平 - 46 - 成15年厚生労働省・国土交通省告示第1号。
以下「基本方針」という。
)を策定 しており,被告においても,これらを受けて,平成16年3月に「大阪市野宿生活 者(ホームレス)の自立の支援等に関する実施計画」を策定している。
以上の経緯を経て,被告においては,本件各処分当時,野宿生活者対策として, ? 自立支援センターの設置運営及び? 仮設一時避難所の設置運営のほか,前記 (3)イで認定した? 野宿生活者巡回相談事業の3つの事業を行っていた。
イ自立支援センターについて 自立支援センターは,失業等により住居を失い公園や路上等で起居する者のうち, 就労意欲のある者及び稼働能力のある者に対し,宿所及び食事を提供するとととも に,生活相談,健康相談及び職業相談を行うことにより,これらの者の就労による 自立及び社会復帰を支援することを目的とする施設であり,被告は,大阪市内に, 平成12年10月に自立支援センター大淀を,同年11月に自立支援センター西成 を,同年12月に自立支援センター淀川を,平成18年1月に自立支援センター舞 洲1及び自立支援センター舞洲2を,それぞれ開設している。
被告は,これらの自 立支援センターの管理運営については社会福祉法人に委託している。
これらの自立 支援センターのうち,本件各処分時に既に開設していた自立支援センター大淀,自 立支援センター西成及び自立支援センター淀川の概要は次のとおりである。
(ア) 施設等について 上記各自立支援センターの定員は,80ないし110名である。
これらには,い ずれもシャワーが設置されており,入所者1人当たりの収納設備を除いた床面積は, 2.6ないし3.7?である。
また,これらの居室は,8ないし12人部屋となっ ており,2段ベッドが並べられ,それぞれカーテンで目隠しがされている。
なお, 自立支援センター大淀については,後記のとおりサテライト事業が行われており, 1人で生活できるスペースもある。
また,家財道具等については,身の回り品ない しロッカー又は収納ボックスに収まる程度のものについては持込みが認められてお り,自立支援センター西成では就労者の通勤用自転車については持込みも認めてい - 47 - る。
入所期間は,原則として3か月とされているが,自立支援センター長が有益と判 断した場合には,1か月ごとに期限を延長し,最大6か月まで入所期間を延長する ことも認められている。
もっとも,施設によっては入所期限について柔軟に対応し ているところもあり,入所期間が6か月を超える例も少なからずあった。
なお,自 立支援センター大淀については,平成18年1月から再入所を認めており,他の2 つの自立支援センターにおいても再入所を認めている。
また,これらの自立支援セ ンターでは飲酒等が禁止されており,入所者らの預貯金についても自立支援センタ ーにおいて管理しており,午後8時ないし10時の門限も設定されているが,仕事 で遅くなる等の正当な理由がある場合には例外も認められている。
(イ) 事業内容等 これらの自立支援センターでは,入所者に対し,健康診断等の健康相談,1日3 度の食事の提供,日用品の支給,求職活動のために必要な衣料・交通費や,必要経 費の貸付け,公共職業安定所の職業相談員による職業相談や履歴書の作成指導等の 就業支援事業,大阪弁護士会と協力しての法律相談事業,福祉相談事業などの自立 支援事業が行われている。
なお,これらに加えて,自立支援センター大淀において は,入所者に,就労自立直前の2か月の間,同センターのそばに位置するアパート の個室に入所してもらうというサテライト事業も行っている。
(ウ) 退所後の状況等 これらの自立支援センターにおける就労自立率は,40ないし47パーセント程 度であり,これら就労自立した者の平均月収は15ないし16万円程度であったが, 無断退所や自主退所する者も多く,退所後生活保護を受給するに至った者も多いも のの施設保護が多く,居宅保護を受ける者の数は,各センターにおいて,それぞれ, 数人ないし十数人であった。
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